青釉扁壺

イランのスーサで出土した同型の遺物の資料を拾い読みしたところに拠れば"携行用の水筒"とされるパルティアの施釉壺で、掌の端で平らに伸ばしたような扁壺に双耳のついたフラスコ形状の提瓶です。

7世紀以降のペルシャ陶器を想起させる釉色ながらパルティアに独特の器形なのでしょうか。時代の下がる出土遺例に同形の物は見つけられず、図録に見られる緑釉や青釉の扁壺との相違点を探っていました。青釉の釉色の上に出土に伴なう銀化を顕したもので、掌に収まりそうな控えめな大きさの輪郭の内側に独特な色が粧飾されています。

"破損が普通の状態"とされるように、器表に斑点状の滲みのように見えるのは共色による補修痕です。両面に複数見られますが目を凝らしても補修であるのか一見判らないほど自然に直されており、美観を保っているのは好所かと思います。

自立不可、水漏れ未確認のため花器とする場合は落しをお使い下さい。

青釉扁壺 / 御売約
径 8.7 cm – 高 10.5 cm
パルティア / アルサケス朝
紀元 1 – 3 世紀頃

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香箸

薄く削った竹材と象牙を格子状に貼り合わせた市松模様の柄で、隅に小さく朱字の銘でも印されていそうな香箸です。

鞘のような箸留めにきちりと収まる作りの良さは指物の技法によるものと考えられそうで、本来お香の火箸として用いられたもののようですが、東福寺の庭園で水菓子を戴きたいような、夏の涼みに役立てたくなる菓子箸の役割など担えそうな趣きがあります。

桐箱に収めると大仰な感じがするのが余り好きではないのですが、分からないままに尊重するよりかは使い途をそれぞれで立てればよいものと思います。そのような事を考えていて共箱を撮り忘れてしまいました。ご容赦ください。

香箸 / 御売約
大正期以降
20 cm
共箱

特定国際種事業許可番号( 象牙製品取扱い )00764

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小銅鏡

出土した高麗鏡のように朽ちたり緑青を伴なう物ではありませんが、朝鮮の小型鏡を2種竝べてみました。

和鏡や中国の青銅鏡と較べて鏡背面の模様が素朴で、抹香臭さのない、生活様式から得た意匠を写したものと感じられるのが長所でしょうか。威厳はありませんが、その気取らない寛かな調子が好きで、何心なく目に入って嬉しいようなものを喜びの種と名づけているのですが、そこに当て嵌まると感じている小品です。

いずれも高麗鏡より時代の下がる物のようですが、平頭紐( 紐を通す孔 )が中央に配され、高麗より地続きの朝鮮らしい造りを保っています。

小銅鏡( 李朝時代 )
径 4.5 cm / 御売約
径 5.5 cm / 20,000円

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水晶切子玉と赤瑪瑙管玉

ソウルの国立中央博物館では《 伽耶の本質展 》が催されていますが、本場とあって日本では中々見られない伽耶土器を多く見られた事は収穫でした。館内を徘徊すると水晶切子玉と赤瑪瑙管玉も展示されており、朝鮮の水晶などは余り美しく保たれているので古来のそれとは気づかぬような出来栄えです。

等級として比較して良いかは判りませんが、手元に収めた2つの出土遺物はお気に入りの2種で、何か共通する存在をそれぞれの内に感じます。管玉などどれも大同小異で、安く手中に収められればいいと考える方もあるかもしれませんが、選ぶ段になってこれと決めるくらい魅力のあるものを求めたい方に見て頂きたい佳品です。

いずれも古墳時代後期頃、瑪瑙は韓半島からの渡来品のようです。

水晶切子玉( 古墳時代後期 )4.2 cm / 御売約
赤瑪瑙管玉( 古墳時代後期 )2.3 cm / 御売約

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李朝黒釉片口

李朝時代後期には白磁の片口が作られますが、黒釉の片口と云うのは余り見られないのではないかと思います。漆工品のような、あるいは石工品のような形象からは丈夫さが取り柄と見えなくもなく、正円形とは呼べない歪みを伴った形や艶のある茶褐色がバランスの良い成因と思われます。

見慣れない物を手にすると嬉しい反面、一人で国を背負ったように不安にもなり、あらまほしきことかなと頼りないのですが、黒釉( 天目釉 )の壺が溢れるほどある事とは対極で、あるいは目に入るような魅力が他の物になかっただけなのかもしれませんが、器物全体を通じて魅力的な稀ものの器だと思います。

一箇所のみ薄いニュウが見られますが、ほぼ完品と云ってよい状態の好さを保っています。

李朝黒釉片口( 李朝後期 – 末期 )外径 17.2 cm – 9 cm / 御売約

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南方美術店 ( 12:30 – 19:00 )
世田谷・
二子玉川駅より徒歩11分 / 用賀駅10分

李朝民画虎図

李朝民画の中では護符に描かれる虎のようで、かなり寓話的な一枚かと思います。山の深い水溜まりに落ちた虎と鵲( カササギ )がやり取りをしている旧話の場面で、紙芝居のひとこまのようでもあります。

このような雑画では虎は雑鬼を追い払うために描き、門や室内の住空間に飾ったそうですが、絵師によるものとも坊主によるものとも思える墨描きの絵で、諧謔的で好ましい一枚ではないかと思います。絵は屏風から剥がしたマクリを額装してあるため、写真は硝子越しでぼやけていて、実際の魅力が写っていないように感じられます。

落款を押し損ねたような朱が見られますが、判別は出來ていません。他所では余り見られないような民画を数枚見つけられましたので、併せてご覧いただければ幸いです。

李朝民画虎図( 李朝時代 )額寸法 48.5 × 33.4 cm / 85,000円

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南方美術店 ( 12:30 – 19:00 )
世田谷・
二子玉川駅より徒歩11分 / 用賀駅10分

李朝石硯

巷では暖冬が話題にのぼるほど穏やかな日が続いていましたが、今週は韓国で買い付けの為しばらく不在にします。二月のソウルは氷点下七度、八度と、随分寒いことを云っていて、いちばん寒い日でも着たことがないようなもの、熟練した職人たちを呼び寄せて新しいコートを作るか、熊の皮のおおいを丸ごと被るかして臨みたいものです。

ご紹介は李朝の石硯。旅硯として携えた親指大の小品。石匣のような佇まいのよさはありませんが、摩滅した消耗感に好ましさがあります。

11日から14日は休業、15日は開封作業をしながらの営業、翌16日は都合により休業致します。ご来店の際は営業日をご確認の上お越し下さい。

石硯( 李朝時代末期 )6.4 × 3.6 cm / 御売約

古伊万里瑠璃釉猪口

年が明けて物事も緩やかに動き始めていますが、何となく消極的でまごついていたインスタグラムのアカウントを開設致しました。日曜版のようなつもりで、いままでのように身辺に持ち上った小さな出來事について話をつづけて行くつもりです。どうぞよろしくお願い致します。

古伊万里の覗き猪口と呼ばれる形ですが、右肩上がりで、可笑しな恰好に傾いているのは不測のことです。曲がりなりにも瑠璃釉という姿勢を保っているところに返って好ましさがあり、瑠璃色の斑らな調子にも動きが感じられます。

無疵・完品。

古伊万里瑠璃釉猪口 ( 江戸時代 )外径 5.4 cm – 高 5.4 cm / 御売約

レッドウェア 円筒器

赤土の素地にレンガ色の釉が発色した円筒器で、"レッドウェア"と呼ばれるアメリカの陶製器です。ニューヨーク – ペンシルベニア周辺に移り住んだ英国人陶工に拠るもので、原型に"スリップウェア"と云うイギリス陶器を有ちます。

ヨーロッパ陶磁史に少し話を遡らせると、スペインに"アルバレロ(albarello)"と呼ばれる薬を容れた円筒器があり、西欧では筒型はひとつの定型であったように思われます。ニューイングランドと呼ばれるこの地方の特色は、幼少期から棒切れや泥を手に過ごさなければ分かりそうになく、それでも気まぐれな一個人によって移り変わった形や、アメリカ東部と西洋文化の一部が交じり合った地方色( それからピーナツの殻を食卓から投げ入れて遊んでいる様子なども )浮かび上がって来るように思えます。

主にコネチカット州で生産された形と訊きますが、資料に乏しく確証に欠けます。口部に欠けと薄ヒビ、全体に所剥げ等が見られますが、水漏れもなく、概ね好い状態を保っています。

レッドウェア 円筒器( 19世紀中頃 )外径 16.3 cm – 高さ 27.3 cm / 26,000円

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漆桶

漆桶は《 シッツウ 》と読むのですが、桶を《 ツウ 》と読むことに馴染みがなかったり、《 シッツウ 》と云うかしこまった音に耳慣れず、この一言半句には長い間言葉を詰まらせています。"ビリゴ ベリゴ"と啼くつばめの声があるそうですが、物覚えと云うのは音の担う所もあるし、いかにもと様子で覚えているような所があるので、桶にはやはり"おけ"が相応しいように思えます。

木の皮を剥いで、円く巻くような恰好で筒形に作るのが一般的な漆桶の形で、底板は木材を嵌めている物、麻布を貼って漆で固めた乾漆のものとを見かけます。これに樹木から掻いて採集した漆(樹液)を容れて用いる山の道具で、"漆を塗った桶"ではなく、漆を容れた桶のことを指します。

寸胴でも建ちの低い半筒の恰好で、辺り一面黒々と覆われたものよりこちらの方が好みです。胴に箍( たが )を廻した桶らしい作りで、売る為に漆をかけて作ったような粗悪な物も多く竝んでいますが、確りと実用されていた物の好ましさがあります。

漆桶( 時代不詳 )外径 17.6 cm – 高さ 12.4 cm / 御売約