イランのスーサで出土した同型の遺物の資料を拾い読みしたところに拠れば"携行用の水筒"とされるパルティアの施釉壺で、掌の端で平らに伸ばしたような扁壺に双耳のついたフラスコ形状の提瓶です。
7世紀以降のペルシャ陶器を想起させる釉色ながらパルティアに独特の器形なのでしょうか。時代の下がる出土遺例に同形の物は見つけられず、図録に見られる緑釉や青釉の扁壺との相違点を探っていました。青釉の釉色の上に出土に伴なう銀化を顕したもので、掌に収まりそうな控えめな大きさの輪郭の内側に独特な色が粧飾されています。
"破損が普通の状態"とされるように、器表に斑点状の滲みのように見えるのは共色による補修痕です。両面に複数見られますが目を凝らしても補修であるのか一見判らないほど自然に直されており、美観を保っているのは好所かと思います。
自立不可、水漏れ未確認のため花器とする場合は落しをお使い下さい。
青釉扁壺 / 御売約
径 8.7 cm – 高 10.5 cm
パルティア / アルサケス朝
紀元 1 – 3 世紀頃